今日、目に飛び込んできたニュースー。
9年間に及ぶ医学部受験と浪人生活、その後、何とか理解を得る事ができ看護師を目指し進学したものの、4年生になって内定していた就職先を親に干渉され、助産師を目指す為に再受験を強要され、最終的に母の殺害に至ったという事件です。
所謂「教育虐待」、「精神的虐待」と言える状況だと思いますが、この事件を通して私なりに考えてみた事を書きたいと思います。
なぜ親は教育(学力・学歴)に熱心になりやすいのか
現在の日本社会では、以前と比較したらチャンスはたくさんあるものの、未だ新卒一括採用が存在し、学歴が生涯賃金に直結しやすい現実があります。
求人欄を見ても、「高卒以上」や「大卒以上」と学歴に触れている求人はかなり多く、中には学校推薦という就職制度もまだ存在しています。
また学歴による生涯賃金モデルも示されている事から、単純に「良い生活=収入を増やす」という思考になると、より高学歴である事が単純な解決策に見える事でしょう。
もちろん高学歴だからといって、必ずしも一般的に示されている平均賃金が保証されるわけではなく、ある程度の大学に進学し、ある程度の企業に就職できたらの話です。
またさらに冷静に考えれば、定年までその会社が存続している保証も、本人が定年までその会社で勤める気持ちが続くのかも誰にもわかりません。
ただ自分が親になってみて分かった事は、親というのは我が子かわいさに盲目的に「自分の子供には不幸になって欲しくない」、「苦労して欲しくない」と思うものなんだと思います。
子供が成人し自立した後では、親のできる事なんて限られていますよね。だからこそ、「学歴」という親として授けられるものを少しでも授けようとする心理が働くのかもしれません。かくいう私も、何の疑問を持つこともなく「子供は大学に行く」前提として、教育費のプランを立てています(笑)
そういう意味で、親が手っ取り早く子供の幸せの安心感を得る事ができるのが「学歴」なのではないでしょうか。
近年の児童虐待の現状
少し古いデータになりますが、平成30年度(2018年)における児童相談所の児童虐待相談対応件数(速報値)が下記の図です。
出典:平成30年度における児童相談所の児童虐待相談対応件数(速報値)、文科省
https://www.mext.go.jp/content/20191217_mxt_syoto02-000003250_20.pdf
ニュースなどで児童虐待が取り上げられたり、平成27(2015)年に児童相談所ダイヤルが設置された事も背景にあるかもしれませんが、平成11(1999)年と比較し約13.7倍にも相談件数は増加、総数は159,850件にも上っています。
今回のニュースに取り上げられた「教育虐待」は内容別でいうと「心理的虐待」に該当すると思いますが、じつに55.3%を占めています。
「心理的虐待」=「教育虐待」ではないものの、暴力などの身体的虐待や性的虐待と比較し、「心理的虐待」は目に見えないから難しく、また子供の捉え方によって認定が難しい面もあると思いますが、親に自覚がなくても”一歩間違えたら起こりうる可能性”も秘めているものなのかもしれないと感じました。
教育虐待にならないように親にできるサポートとは
私もそうですが、親ならだれでも自分の子供の夢は全力で応援したいと思うものです。
うちももし娘が「医者になりたい」と言ったら(現実に少し前まで、お医者さんごっこが好きで「お医者さんになりたい」って言っていましたw)、サポートは惜しみませんし、それなりに教育費の試算や覚悟も始める事でしょう。
現に、母親を殺害してしまったこの娘さんも、最初は「ブラックジャック」に憧れ、外科医になる夢を抱いていたと書いてあります。
このニュースを見た時に、最初に感じた事は御多分に漏れず
「(子供が)かわいそう」
でしたが、本来あるべき姿とは何だったのか、何処でボタンを掛け違えたのかという気持ちにもなりました。
子供はお金を稼ぐことができないので、親としてできるサポートで一番大きなものは金銭的なものだと思います。それだけではなく、子供の心に寄り添ったり、一緒に悩んだり、時に大人だからこそわかる助言を与えたり、と言った事もサポートの一つでしょう。
親だからこそできる事は何か
もし自分の娘が「医者になりたい」と頑張っていたが、高校生の時点で「難しそうだな」となった時に、「自分だったらどうしただろうか」と私なりに考えてみました。
※ 今回は「医者」「医学部」という難易度が高く特殊な状況も事件の一端と考え、この設定にしました。
実際に当事者になったら、こんな風に思えない事もある事も理解しているつもりですが…だからこそ、今のニュートラルの状態で考えた事を記録しておきます。
- そもそも「医者」ってどんな職業なのか、どんな就労実態なのかを調べる
- 医者になる為のルート、難易度を再確認し、現状と照らし合わせ実現の為の作戦を立てる
- 医者になりたいと思った動機を元に、他の選択肢も一緒に考えてみる
- 結果が全てではない事、目標に向かい努力する課程も大切な事を教える
- どんな選択をしても、親はいつも応援しているし子供の味方と伝える
そもそも「医者」ってどんな職業なのか、どんな就労実態なのかを調べる
子供の夢をつぶす気は全くないのですが、憧れている時には「見えない現実」っていうのものが存在する事を親は知っていますよね。
せっかく努力をして夢を叶えたのに、実際に働いてみたら「現実は違った」とならないように、良い所も悪い所も一緒に調べてみる。
医者になる為のルート、難易度を再確認し、現状と照らし合わせ実現の為の作戦を立てる
まあこれは簡単に言えば、「お互いに一度、冷静になろうよ」って事です。
ゴールや目標値がどの程度で(「医者」の場合、国家資格を取得せねばなりませんし、その為に通るべきルート(医学部)が存在します。ルートがあるという事は、人数が制限される事(1年間に何人が医学部に合格できるか)もあるし、人気があれば当然その人数枠に入らねばルートに乗る事も出来ません(何人が受験し、何人が合格しているかなど)。実現可能なのか、実現するとしたら、今からどのくらいの努力と時間が必要なのか(どのくらいのお金がかかるのかも含め)、を親子で冷静に再確認しようという事ですね。
医者になりたいと思った動機を元に、原点に返りもう一度掘り下げてみる
これは漠然と「今一度立ち止まって、原点に返ってみよう」という事です。
例えばですが、将来の夢が「レストランで働きたい」だった時、その根底には何があってそう思ったのか。「人と接する仕事がしたい」とか「人が喜ぶ顔が見たい」といった、比較的漠然としたものであったのなら、まだまだ他にも色んな選択肢があると思うからです。
結果が全てではない事、目標に向かい努力する過程も大切な事を教える
これは子供には理解してもらえないかもしれませんが、大人になればわかりますよね(笑)
「結果が全てではない」ものの、実現するための「アプローチや工夫」、「努力の過程」から得られる経験はたくさんあると思います。「良い結果」になればもちろん良いですが、目標を実現できなくても、必死にやればやっただけ、その挫折や悔しさ、失敗は必ずのちに生きる経験となると思います。
そしてその後のフォローも親の務めかなと思っています。
どんな選択をしても、親はいつも応援しているし子供の味方と伝える
これは言葉のままです。
世間一般的には「条件付きの愛」なんて言われていますが、「○○したら○○してあげる」ではなく、子供が生まれた瞬間に感じた事「元気でいてくれさえすれば、それでいい」っていう、原点の気持ちを親の自分も忘れてはいけないな、って思います。
まとめ
今回の事件は、娘さんは懲役10年の実刑判決だったそうです。
9年浪人し、社会に出ないまま事件を起こしてしまい、裁判、懲役10年…。ニュースサイトで見る限り、刑期を終える頃には44、5歳になっているでしょう。
最初は、母親は娘を思ってした事だったにしても、途中から明らかに読んでいて常軌を逸していましたし、また娘さんも母親の気持ちに応えたい気持ちがあったのかもしれませんね。また「母子2人だけの世界」という側面もあったのかもしれませんね。
娘さんは大学に通い始めてからは社会と接点がありながらも、やはり年齢が行けば若い子と違って記憶力や体力はキツクなる面もあるし、大学生活も楽ではなかったかもしれません。
助けを求める選択肢を選ぶ前に追い詰められてしまった、余りにもかわいそうな事件だと感じました。
私自身もやや特殊な環境で育っており(どちらかと言えば、親が非協力的というか無関心というか…)、漠然と「子供には自分と同じ思いをさせたくない」という気持ちがあります。またちょうど今、4月から娘の通信教育を始めようと思っていた所なので、個人的にこの記事を読むことができてよかったです。